敷地は小さな農村集落の中心にあり、築75年のレンガ造部を残し木造部を新調する計画である。
レンガ造の倉庫、半屋外の作業場、木造の事務所を一枚の屋根で覆い長屋のような平屋とした。
レンガ部は建主の祖父の手によって積み上げられ、新たな木部は若い地元の棟梁によって改修された。
数年を経て木部は炭化し銀色に落ち着き、レンガ部は変わらず赤褐色のまま少しずつ風化していく。
築造された時代も技巧も材料も異なる一棟の建物は、四季折々変化する農村風景の中で変わることなく人々の意識の中に植え付けられやがて風景と化していく。そしてはじまりの不明な、名前のない建築が生まれる。