玄海国定公園の西端に位置し、玄界灘に⾯した海の⼀望できる敷地です。建主はカナダ在住で、お⽗さまは千葉、お⺟さまは福岡、妹さまは東京と、それぞれに異なる拠点で⽣活されています。幼少期ご家族が⼀緒に過ごしたこの地にもう⼀度家族の集える場を作ろうと、既存建屋の建替えをご依頼頂きました。
「海が⾒えて家族が自由に滞在できる場ほしい」これが唯⼀のご要望でした。そこで必要諸室のボリュームを少しずつ雁⾏させ、そのズレによってすべての部屋から海が眺められるように各室を配置しました。奥まった⼭⼿側でも床⾯を一段⾼くすることで、より広い海⾯と⽔平線が眺められる断⾯構成です。海岸線から離れるほど、海の広がりと奥⾏を直感的に感じることができる空間です。海や森の⾒える西面と南面は神殿のように開放的に、東面と北面は壁を多くして洞のように閉鎖的に、朝⽇の⼊る寝室・日中明るいテラス・⼣⽇の落ちるリビングなど自然の移ろいと暮らしが共にあります。
異なるライフスタイルを持つ一つの家族が、時には同時に時には⼊れ違いに⾃分たちのスタイルで余暇を過ごします。この糸島の家で過ごした時間は、自然の移ろいと共に、家族に共有される一冊のアルバムのようです。空間そのものが記憶を宿し、家族のつながりを形作ります。それは、成長の記録が刻まれた柱を見て懐かしむように、より身近な建築の可能性を再考察しました。