お迎えホールから始まる保育園
田園風景の中に突如現れるこの保育園は、一級河川の筑後川と耳納連山が一望できる自然豊かな敷地環境の中にあります。市街地の外れに位置しながら250 人の園児が通うマンモス保育園です。多くの園児数と限られた面積条件により、既存園舎には育児相談や情報交換のできる場がなく、親と園とのコミュケーション不足が課題になっていました。そこで私たちはエントランスホールを「お迎えホール」と名付け、園児の受け渡し・親の相談窓口・園の活動報告と、活動と情報の発信の場として提案しました。奥行き40M のホール空間は、建物内を南北につらぬき、吹き抜けや階段によって上階にもつながっていきます。玄関からホールに入ると、食堂や保育室でお話する園児の様子が目に飛び込んできます。さらに見上げると、吹抜ごしに2 階の保育室や外部テラスで遊んだり、階段に座る園児の姿が見えます。お迎えホールを歩くだけで、園の状況が直感的に分かるライブな空間構成です。また園行事や地域でのイベントごとには食堂の間仕切りを全開放し、ホール自体が大きなステージのように機能し園全体をにぎやかに彩ります。各諸室は、建物自体を敷地形状に合わせ「くの字」に細長く引き伸ばしたような形状をしています。辺の長さや角度の異なる台形のような室形状は、作品を飾る大きな壁面や様々なコーナー遊びなど保育活動にとっての柔軟さをもたらす平面形状です。隣接する室同士が少しづつズレながらずるずると周辺他の室と関係し合うことでお互いをより意識し合うゾーニングとなっています。そこに各階のテラスが接続することで、内外行き止まりのない自由な動線が建物全体を立体園庭として機能させます。お迎えホールから縦横無尽につながる空間は、園児たちを相互に刺激し成長をもたらしてくれることを期待しています。