地域デザイン棟は、宮崎大学に新設された地域デザイン講座のための施設である。地域デザイン講座は、大学の資源と民間活力を掛け合わせ地域創生・地域活性を目的に開設された。新たな産学連携交流拠点として、講義のほか、研究発表や県下産業展示の場としての活用も期待され、活動の幅に合わせた柔軟な空間が求められた。
また当該敷地は、緑地広場や竹林に囲まれ、生協や食堂、図書館など学生動線の集まるキャンパスライフの中心にある。一方で300名を収容できるコンベンションホールを備える記念交流会館や大学会館が隣接しており、ホールとしてのアイデンティティをどのように持たせるかが課題であった。
建物は4つ直方体と1つの大屋根で基本構成されている。格子のような華奢な柱に支えられた大屋根の下には、大小のスタジオや教員室が屋外ホールや軒下空間と連続しながら緑地広場と続いていく。巨大なガラス面が、スタジオ内の活動と緑地広場の賑わいを相互に刺激し合っている。
本構造は柱を80m/m角鋼管と梁せい150mmのH型鋼のラーメン構造とすることで、天井高さを最大限確保しつつスラブ厚の薄い軽やかな無柱空間を実現している。また柱とガラス面を構造シールで接着することで、内部からはガラス割が見えず外部からは外装材と境界のないサッシュレスでシームレスな外観を目指した。陽のあたる角度によって、光沢のある外壁と反射するガラス面は、建物と緑地広場の境界面を前後に行き来させる。日差しの変化が極端な宮崎に、一日の中で様々な人の流れや活動に合わせるようにファサードも変化していく。
細分化された集落のような群風景は、高層で重厚な周辺学部棟とは対照的に小さく無機質である。しかし内外の活動や風景を増幅させ、刻々と変化し続けるうつろうファサードは、新たなキャンパスコアとして緑地広場を活性化させる役割を果たしている。