大川保育園は、福岡県大川市の花宗川のほとりに建つ保育園である。大川家具で名高い大川市は、古くから木の香りに包まれ、木工業と密着した町として知られている。今回既存園舎の建て替えにあたり、大川の地域性を意識しつつ1000坪の広大な敷地を生かした園舎になればと設計に取り組んだ。子どもたちは園庭で遊びながら学んでいく。子どもにとって園庭は、遊び場であり、小さな自然であり、始めての社会である。園舎と園庭の境界がなく、敷地全体が園庭のような開放感と散策性に溢れた場所を作れればと考えた。
保育室と園庭の関係を直結させるため、園庭に向かってホールを中心に各保育室が放射上に広がる平面計画とした。各保育室からは園庭に直接出入りでき、ホールを介して屋内外自由に移動することができる。一方で園舎の中心であるホールにはハイサイド窓を設け、一望できる園庭と同様、自然光の降り注ぐ明るい空間とした。各保育室は異年齢交流を想定して2部屋1組とし、保育活動に合わせて可動建具により間仕切れるように計画した。催事にはホールとの間の建具を稼働させて一体利用することで親御親戚まで含めた参加者の収容量を確保した。また認識力に乏しい幼児でも木質空間の個性によって空間認知ができればと、各室の天井高さや架構の現し方を変化をもたせた。
本構造は、基本グリットを1.5間とした木造在来工法でありながら、ホールなどの大スパンを大断面などを用いず汎用材(60×450@455)で実現する経済設計とした。またその梁を現しとして木質感と天井高さを確保することで、明るい屋外ひろばのような健やかさを目指した。さながら天候に左右されない第2の園庭である。
園児にとって、この敷地のすべてが園庭である。園舎と園庭、境界なく自由にあそび、まなんでほしい。