神奈川県横浜市の若い夫婦のためのマンション一室の改修計画。 現状の間取りに窮屈さを感じており、仕切りのない広くオープンな間取りと個性的な空間になることを希望された。数年前に設備と内装のリフォームが済んでおり、比較的綺麗な状態であったことと予算をおさえた改修を求められたため、既存の状況を可能な限り残しながら部分的な解体と日々の暮らしに密接に関わる什器の在り方に焦点をあてた。また、ブティックや雑貨屋などのショップを巡るのが趣味という施主の言葉をヒントに、ショップのように居場所が位置づけられていない自由な空間と暮らしを目指した。
間取りは水回り等のコア位置は変えずに、間仕切壁を不要な部分のみ撤去しコアを迂回しながらUの字型にひとつながりになるオープンな間取りとした。スライムのようになめらかに広がる新たな床を作り、好みの服を探して散策するような個性的な什器を点在させた。スライム床は、共用部から続く園路のように玄関からリビングに伸び、テラスや寝室まで広がる。ソファやベットを床のくぼみに納める一方で、バーカウンターや可動間仕切を床を横断するように配置した。生活にまつわる道具や家具は床に埋もれ、対面することや共有することに積極的な設えとした。また街の緑に向けた配置した机や開口隙間が光る既存建具によって「向こう側」を意識させ、マンションの一室に留まらない奥行きや広がりを感じるデザインとした。
既存の設えを背景に新たな什器や視点を加えることで、これまでの暮らしとは異なる、新たな豊かさをもたらすのではないかと考えた。